ボルテージの恋アプを世界に|株式会社ボルテージ

ユースケ
2009年新卒入社。 「Samurai Love Ballad: PARTY」(天下統一恋の乱 Love Ballad)をはじめとした、国内タイトルの海外展開業務に携わる。
2016年より1年程、米国サンフランシスコ子会社「Voltage Entertainment USA, Inc.」に出向。
現在はプロデューサーとしてL10N事業部の企画・制作および翻訳グループを統括している。

※L10N:localization(海外の文化や生活、トレンドなどをターゲットに合わせて翻訳すること)の略。“ライオン”と読む。

ジェシカ
2014年入社。チームリーダーとして、翻訳版タイトルのローカライズ業務だけでなく、ロサンゼルスで開催されたAnime Expoのボルテージブースの運営業務に携わっている。

ボルテージでは、海外向けに一から制作するサンフランシスコの事業とは別に、国内で、日本向けのボルテージタイトルを海外展開するためのローカライズを行っています。
ローカライズ業務に携わる二人に、日本との文化の違いやトレンドについて、裏話をたくさん聞きました。

何も壊さない、伝えたい

―――――――――L10Nグループというボルテージのコンテンツを翻訳している部署にお二人は所属されていますが、実際はどのようなお仕事をされているんですか?

ユースケ:L10Nグループのマネージャー兼プロデューサーとして組織が働きやすい環境になっているかを意識しながら、「ヒト・モノ・カネ・情報」の管理を行っています。

ジェシカ:私は翻訳チームのチームリーダーとして、翻訳チェックをするだけでなく、訳す上で海外の文化としてマッチするかどうか、などを見ていくのも役割です。

―――――――――海外の文化にマッチするかもチェックしているとのことですが、翻訳する時に日本と海外でかなり違うなと思うことはありますか?

ジェシカ:日本の場合、ヒロインは少し恥ずかしがったり不安になったりするタイプが多いのですが、海外ですと、自信がなさそうに見えてしまい、そういったヒロインは好まれません。“ストーリーの内容はそのままに”でも海外のファンにも喜んでもらえるように変えています。
例えば、日本だと手をつなぐだけで“ドキドキ”しても、海外だと普通すぎてインパクトがないんです。

ユースケ:海外だと挨拶でハグするくらいないなので、その辺のスキンシップのレベル感が違いますね。ヒロインが「下の名前で呼ばれた!」みたいなことでドキッとするのに対して、海外ならそもそも下の名前で呼んでいるという感じなので。

ジェシカ:今翻訳しているタイトルでもちょうどその話になりましたね。普通のシーンだと「コウジ」と呼んでいるのに対し、胸キュンシーンでは「ベイビー」みたいな言い回しに変えて甘い感じにしています。人気タイトルの「Samurai Love Ballad: PARTY」(天下統一恋の乱 Love Ballad)に出てくる才蔵さんは、日本では「おまえさん」しか使いませんが、海外だと「リトルレディー」と言ったり。こういったことがコアファンにはとても大事なんだと思います。

ユースケ:その気持ちはすごく強いですね。このタイトルの良さをどうやったらそのまま海外のファンにも受け入れてもらえるか、を毎日考えて翻訳してくれています。基本的には“何も壊さない、伝えたい”。

ジェシカ:先輩の翻訳者に言われて今でも大事にしているのは「ローカライズというのは、直訳するのではなく、同じ気持ちにさせること」。日本の人が読む時と同じ気持ちになるかを日々チェックしています。
日本の文化についても説明を入れないといけないこともあります。平安時代のお話などは、顔を見せてはいけないとありますが、海外だと「なんで?」となるので、説明を入れないといけないなど。
食べ物についても、ローカルな食べ物がストーリーの中でかなり入ってくるのですが、例えばお雑煮とかは海外の人は「雑煮って何?」となるので、翻訳を工夫します。

ユースケ:餃子とかは「点心」とまとめて表現することもありますが主食なのかデザートなのかがわるのであればそのまま残すこともあります。要は、ストーリーの邪魔にならないようにしてあげる、ということですね。

ジェシカ:そうですね。ストーリーを読みながらその世界観から抜けないように、を意識しています。

ユースケ:ただ、デリケートなものもあったりします。

ジェシカ:「After School Affairs」(教師たちの秘密の放課後)は今までで翻訳した中で一番変更が多かったコンテンツですね。海外では教師と生徒というシチュエーションがとてもデリケートで、ヒロインを弱い感じにしてしまうと、パワーギャップが出てしまうんです。そのため、教師たちの年齢を下げ、ヒロインの年齢を上げて、彼女がすごく積極的という感じに変えました。

ユースケ:「ダウト」を翻訳する時も、大変でしたね。「ダウト」は悪い男を見抜いていい男を見つける、というゲームなので、登場キャラクターの中には「DV男」や「おかま男」が出てくるわけです。楽しむためにゲームをしているのに、不快な思いをさせたくないですから、そこの変更はすごく難しいです。
例えばDVのキャラクターが壁を殴って穴をあけるシーンなどは日本人が思う以上に海外では怖く感じられるので、ちょっと乱暴的な言い方に留めるなど、変えたりします。

ジェシカ:日本ではないシーンとして、その後に警察を呼ぶシーンを追加したりしましたね。
また、おかまキャラが出てくることも海外では受け入れられないですね。最近のトレンドは「He」「She」を使うよりは「They」とジェンダーのない人、として翻訳されます。ジェンダーの話は海外ではデリケートです。
これは正しいとか正しくなというよりは文化が違うというスタンスです。

―――――日本のコンテンツを海外向けに翻訳するにあたり、どのタイトルにするか基準はあります?

ユースケ:基本は売れそうなものか、というところではあるんですが(笑)日本と同じものが売れる場合もあれば、違う場合も意外とありますね。

ジェシカ:日本だと刑事ものやオフィスラブみたいなリアルなストーリーのものが人気だったりしますが、海外ではファンタジーとか恋愛相手は危険な人が好まれます。
お金持ちのビジネスマンや俺様タイプはどんな国にも人気で、そこは同じです(笑)

ユースケ:「Star-Crossed Myth」(恋してしまった星の王子)は海外ですごく人気ですね。星座にまつわる話は海外の方が好きな印象です。アバターが登場するアプリではギリシャ神話をモチーフにしたアバターを出したこともありますが、すごく売れました。ただ、海外で売れたからといって国内で出してみてもそれほどそれほどでもなかったり。。。
結局文化の違いって大きくて、星座の物が流行るのも、日本だと「血液型は何?」と聞くのに対し、海外だと「星座は何?」みたいな感じで、星座の方が定着しているので、そこも大きく影響していそうですね。

ジェシカ:日本ではキャラクターのプロフィールに血液型が書いてありますが、海外では誰も気にしないと思います。

ユースケ:「輸血でもするの?」みたいな(笑)。全く気にしないですね。

海外ファンの熱量がすごい

―――――――――ボルテージのコンテンツは海外でどのような反響なのでしょうか?

ユースケ:ファンアートコンテストを開催した時も、たくさんの絵を描いてくれたり、自分でアプリをプレイした感想をユーチューブで動画を載せてくれたり、日本のコンテンツを好きな人は世界に大勢いるのでご好評いただいていると思いますね。
自画自賛みたいになってしまいますが(笑)

ジェシカ:アメリカのLAで開催されたAX(アニメエキスポ)に行った時には、いろいろなファンの方からこんなにもボルテージのことが好きなんです!という話をたくさん聞かせていただきました。病気で入院していた時に、ボルテージのゲームをして癒されました、とか日本について勉強しました、とか。。。
海外のファンは愛が強いんです。AXの中でパネルディスカッションの機会があったのですが、「Star-Crossed Myth」がSwithのソフトとして発売されるという告知の時には、周りの声が聞こえないくらい叫んだりして(笑)、好きというリアクションは激しいですね。

ユースケ:熱量がすごいよね。

画像:2019年開催のアニメエキスポの様子

―――――――――――L10Nグループで企画した中で成功したと思うものは何ですか?

ユースケ:コンテンツに“寄付”という考え方を取り入れてくれたのは、ジェシカさん発信の企画で、成功したものの1つでしたね。売上の10%を団体に寄付する、というものでした。

ジェシカ:海外の大手企業では必ずと言っていいほど寄付活動をしています。海外のマーケティングの仕方を勉強して、より長く愛してもらえるためのポイントに気づきました。海外の良いノウハウをインポートして、ボルテージのアプリにも使いたいと思ったんです。

画像:アプリ内で寄付を可能に

ユースケ:教育や乳がんなどの目的のために寄付したお金を使っていただきました。

ジェシカ:貧しい環境から教育を受けられない女性に向けたものだったり、私たちのコンテンツは女性向けなので、実際にも女性をサポートしていることを伝えたかったんです。
自分へのご褒美としてゲームをしながら、他の人も助けたいというところが注目されたのではないでしょうか。


楽しいと思えるものを提供し続けたい

――――――――――お二人の今後の目標を教えてください。

ユースケ:子供のころ僕が海外に住んでいた時は、日本のアニメはほとんど知られていなかったんです。帰国する頃に「ドラゴンボール知ってる?」と言われたくらい。でもその後、セーラームーンやポケモンが出てきて、いろいろなアニメが欧米で流行りました。今はアジアでも日本のアニメはすごく人気が出てきていて、今後ますます広がりを見せると思うんです。日本のものを多くの人が読みたいと思うだろうし、読んだら面白いと思うし、面白かったら売れると思うんです。
今後は海外市場が大きくなっていき、日本を訪れる人も増える中で、“面白い”ことがしたいです。そして、“楽しい”と思ってもらえるものを提供したいですね。それはゲームでもゲームではなくても。究極を言えば、提供価値は“面白いか、面白くないか”です。僕の人生の判断基準でもあります。あたりまえのことですが、楽しいと思えるものを提供し続けたいですね。今の目標でもあり、これからの目標でもあります。

ジェシカ:私は日本のクオリティーや日本の文化が大好きで日本に来たので、日本の良さを世界に発信したいですね。そしてもう一つの目標として、海外の人はファンタジーや危険なロマンスが好き、という声が多いので、L10Nグループとしてそういったものを企画してみたいですね。

ユースケ:世界にマーケットがあるので、企画段階から制作とジョインして作るというのもあるかもしれないですね!

―――――――――ボルテージコンテンツの世界への挑戦は、まだ始まったばかりですね。